慰謝料とは
慰謝料とは
慰謝料は精神的損害の賠償を意味します。精神的損害は当事者ごとに違ってきて当然とも言えますが、人によって違っていては不公平になってしまいますし、そもそも第三者には当事者の内面は判断しようがありません。そこで、交通事故の損害賠償実務では、慰謝料については一定の基準に従って判断する運用になっています。基準となるものについては、「赤い本」「青い本」「緑本」があります。ただし、これらの基準は絶対的なものでは当然なく(個別の事情によっては増減することがあります)、一定の基準として機能しているにすぎません。交通事故事件でいう慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つがあります。入通院慰謝料は基本的には人身事故であれば発生するものですが、後遺障害慰謝料は後遺障害が残らなければ発生しません。単に慰謝料という場合は、入通院慰謝料を指す場合が多く、傷害慰謝料とも呼ばれます。
慰謝料の基準
全国的に裁判基準となる「赤い本」では、入通院慰謝料は、被害者が傷病の治療のために医療機関を受診して治療を受けた場合に認められるもので、入院期間および通院期間に応じて基準化されています。通常の傷害に関する場合と、他覚的所見のないむちうち症に適用される場合で、異なる基準とされています。
大阪地方裁判所ではいわゆる「緑本」に従って認定されていますが、入院期間および通院期間に応じて基準化されています。これでは「重症」と「通常」の2種類の基準があり、さらに、軽度の神経症状(むち打ち症で他覚所見のない場合等)の入通院慰謝料は通常の慰謝料の3分の2程度とするとされています。この軽度の神経症状が何を指しているのかが必ずしも一義的でなく、保険会社は、神経症状の場合は何でもかんでも基準の3分の2しか認めないといった傾向にあるといえます。
自賠責保険では
なお、自賠法13条においては、「責任保険の保険金額は、政令で定める」と定められ、これを受けた政令(自賠法施行令、自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)では、慰謝料は1日4,200円とされています。
任意保険の支払基準は保険会社毎に異なりますが、入院一日について8,400円、通院1日について4,200円程度のことが多いようです。
注意が必要な場合
裁判基準においては、実際の通院期間を基準に別表に当てはめるのが原則ですが、「通院期間が長期にわたり、かつ不規則である場合」には、実際の通院期間と実通院日数を3.5倍した日数を比較して、少ない方の日数を基礎として通院期間を計算するとされています(赤い本、緑本共通)。この基準から通院は週に2回程度が標準的なものと考えられています。したがって、治療期間が長期に及ぶ場合、慰謝料を多くもらうためには、週に2回程度は通院しておくことが必要となってきます。忙しくて病院に行けない場合や、病院に行くことを我慢している場合などは、不当に慰謝料が安くなってしまうことがありますので、通院できるときはできるだけ通院しておくべきと言えます。