消滅時効とは

交通事故による損害賠償請求権も、民法の不法行為(709条)に基づくものですので、民法724条により、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅します。損害及び加害者を知った時からとありますが、ひき逃げなど例外的なものを除いて、通常は事故日の翌日が消滅時効の起算点となるでしょう。ただし、民法改正(2020年4月1日以降発生の事故が対象となります)により、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については3年間ではなく、5年間となります。したがって、今後発生する事故については物損のみの事故は時効期間は3年、傷害を負った場合は5年となります。

ただ、人身損害の場合、起算点を治療終了時または症状固定時とする考え方もあります。特に後遺障害に関する損害賠償請求権に関しては、実務上は、症状固定時とする考えで固まっていると言ってよいでしょう。この場合は症状固定の時期が問題となりますが、症状固定という概念自体がかなりあいまいなものですので、当事者の主張が食い違う場合は注意が必要です。

自賠責保険金の支払請求権の時効は以前は損害を知ったときから2年間でしたが、現在は改正により3年間となっています(自賠法19条)。任意保険の場合の時効は、任意保険会社の約款に従います。自賠法の改正後は、事故時から3年間となっていますが、保険会社と示談交渉が継続中の場合は通常は時効期間はあまり気にする必要はないでしょう。あ

時効以外にも除斥期間と呼ばれるものがあり、事故後20年間の経過で損害賠償請求権は消滅してしまいますが、交通事故事件でこの制度が適用される例は通常は考えられません。