事故後に無収入で生活費がないとき

事故前に無職などで任意保険から休業損害が支払われない場合に保険会社(自賠責保険)から支払われる一時賠償金としては以下のものがあります。治療が長引きそうな場合でかつ無収入期間が続くときはこれらの制度の利用を検討します。
なお、事故前に無職であっても、就職活動中であったり、たまたま前の仕事を辞めた直後であったりする場合は、就労の能力と可能性があるとして休業損害の補償がされる場合もあります。

■自賠法上の仮渡金

仮渡金は被害者が死亡またはけがなどによって11日間以上の治療が必要であって、加害者から損害賠償の支払いを受けていない場合、当座の医療費、生活費、葬儀費などにあてるために被害者の請求により支払われるものです。

死亡の場合は290万円、傷害の場合は程度に応じて40万円、20万円、5万円が支払われます。請求できるのは1回のみで、医師に仮渡し金用の診断書を書いてもらい、自賠責支払請求書と一緒に自賠責保険に提出します。請求用の書類は自賠責保険会社に連絡すれば郵送で送ってくれます。

■自賠法上の内払金

内払金とは、傷害事故で治療が長びき、全体の損害額が確定しないような場合でそれまでに確定した損害(治療費等)が10万円を超えたときに、被害者または加害者からの請求で支払われるものを言います。
回数は何回でも可能ですが、傷害の限度額である120万円までの範囲に限られます。なお、死亡の場合や後遺障害には適用されません。すでに発生した損害(治療費等)を被害者が立て替えている場合に利用することになります。ですので、生活費が足りないのでその補填目的で利用することはできません。ただ、今までの立替金が戻ってくるので、お金は入ってきます。
もっとも、加害者が任意保険に入っている場合は任意保険から治療費が一括で支払われますので、この制度を利用することはあまりないでしょう。

■任意保険の対人賠償保険における内払制度

任意保険会社がサービスの一環として実施しているもので、治療費、通院交通費、休業損害等の損害額が確定する前に、賠償金の一部を内払いする制度です。任意保険会社のサービスの一環ですので、どの限度で支払いがされるかは、任意保険会社によって対応は異なります。また、被害者側の過失が大きいもしくは争いになっているような場合は支払い額が制限される可能性があります。当然ですが、加害者が任意保険に加入していなければ利用することはできません。
 
被害者の当面の生活費が足りない場合で当分仕事をすることができないようなときは、この制度を利用するとよいでしょう。請求の方法については、書式や特別の請求方法があるわけではなく、保険会社の担当者との交渉によって支給されることになります。

■生活保護の検討

これらの手段を使ってもなお、生活が困難な場合は生活保護の受給を申請することになります。ただ、交通事故の賠償金が支払われた段階で受け取った生活保護費の返還が必要になる場合があります。