将来介護費用の算定方法

将来介護費用が認められる場合

交通事故の被害者に重度後遺障害(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷による四肢麻痺等)が残存し、将来にわたって亡くなるまで介護が必要な場合、実際に支出されるであろう介護費用が損害として認められます。将来介護費が認められるようなケースにおいては、後遺障害が将来的に回復することは想定されておらず、損害額算定時において、現状の後遺障害が一生続くものとして、一生分(平均余命まで)の介護費用を算定することになります。請求については、一時金による賠償を請求することが多いですが、その場合は、将来の費用を現在の価額に引き直す必要があり、中間利息を控除します。

後遺障害等級1級または2級といった重度後遺障害の場合に認められますが、具体的な状況次第では3級以下の後遺障害でも認められることがあります。

将来介護の種類は、大きく分けて職業介護(職業付添人による介護)か親族介護の二つがありますが、職業介護になると実費になりますので、費用は親族介護よりも相当高額になります。そのほかにも、介護を自宅で行うのか、施設に入所するのかによっても費用が違ってきます。ただ、単純に親族介護、職業介護の2つに分けられるものでもなく、裁判等では、実際上両方を組み合わせて認定している場合もあり、個々の具体的状況によって変わります。

大阪地裁の基準や赤い本等では、親族介護で常時介護を要する場合は、1日につき8,000円、随時介護を要する場合は、介護の必要性、程度、内容に応じて相当な金額とされています。

また、現状、親族介護がされていても、将来的に、介護者が高齢化するなどして、介護ができなくなる可能性を考えて、一定の時期までは親族介護、その後は職業介護に移行するといった認定がされることもあります。

職業介護では職業付添人に対して支払うべき費用が実費として損害となりますが、裁判では1日あたり20,000円程度が認められることが多いといえます。

介護費用については将来分もまとめて一括で支払われることになりますので、将来利息を控除する必要があり、実務ではライプニッツ係数が使われています。

事故にあったときの年齢にもよりますが、職業介護が必要な場合は、将来の介護費用だけで1億円を超えることは珍しくありません。もっとも親族介護で足りるということになれば、大幅に減額されてしまいます。将来介護が問題になる場合は慎重な検討が必要になります

職業介護か親族介護か

将来介護費の必要性を検討するに当たっては、被害者が職業付添人による介護を必要としているのか、近親者による介護とするのが適切かが問題となります。

この点については、被害者の介護を必要とする程度、現在の介護状況、被害者の家族状況(近親者による介護の可否等)、現在家族が介護している場合でも将来的に継続していくことが可能かなどの諸要素を総合的に考慮し、職業付添人を付する必要性が認められるのかを判断することになります。

将来介護費用の相場

1 職業付添人の場合

職業付添人の必要性が認められる場合、原則として実際にかかる費用に基づく算定がなされます。裁判では、重度後遺障害事案で平均余命まで日額2万円程度が認定されているケースが多いようです。同じ等級であっても、被害者の体格や病状などで介護を要する程度(付添人が二人必要な場合もあります)が異なり、かかる費用も違ってきますが、裁判では、事故後に実際に支払っている介護費を元に認定されることが多いといえます。

2 近親者付添人の場合

被害者の後遺障害の程度、必要とされる介護の内容、介護者の実績の介護の状況等を総合的に考慮し認定されることになります。親族介護では実際に費用を支払っているわけではありませんので、総合的な事情をもとに認定していくほかありません。

裁判では、常時介護の場合、後遺障害1級および2級の事案では、4,000円から1万円の間での認定がなされているようです。 なお、いわゆる赤い本、緑本では、一日あたり8,000円となっていますので、これを一応の基準として具体的事情によって、増減することになります。

随時介護の場合(入浴、食事、更衣、排泄、外出等の一部の行動について介護を要する状態であるとき)は、日額6,000円前後の認定がなされている事案が多いようです。身体的介護を要しない単なる見守り、看視の場合は、一日あたり2,000円程度となることもあります。

裁判の必要性

将来介護費用が問題となる場合、賠償金額が多額になることと、その内容が一義的なものではないため、示談交渉では解決できず、訴訟になるケースが多いと思われます。介護費用は、被害者の今後の生活設計全般にかかわることとですので、慎重に適切に判断し、介護の必要性、相当性を裁判で主張立証していくことが重要になります。